黄変したプラスチック製品が白くなる理由(理論)
2014.11.24
カテゴリ:理科用語
黄変したプラスチック製品が白くなる理由(理論)
- 皆さんおはようございます。オフィス・宮島です。今回は、今まで掲載してきた「黄変したプラスチック製品のクリーニング作業」において、なぜ「黄ばみが取れるのか」を化学式を用いて説明しようと思います。
もう一度復習
- なぜ、ABS樹脂が長時間放置すると黄ばむのかというと…
ABS樹脂はアクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)が組み合わせ、それに酸化防止剤といった添加剤を加えて作成されています。
- それゆえ、ABS樹脂が黄変する理由は、次の2つのどちらか、あるいは両方が考えられます。
- 原料であるブタジエンの劣化
- 酸化防止剤が変性したことによるもの
- 1の要因によって黄変したABS樹脂を元に戻すには…
新しいものに取り換えること
(表面にクラック(ひび)が入ってしまい、修復できない)
- 2の要因によって黄変したABS樹脂を元に戻すには…
紫外線を照射し、空気中の酸素と配位結合した臭素を断ち切って過酸化水素中に含まれる水素と共有結合させてやればOK
その反応を化学的にみると…
- 洗浄に使用する過酸化水素水は、水と酸素に分解されます。
2H2O2 → O2 + 2H2O
- これを読んで「あれ、過酸化水素水が水と酸素に分解されているジャン?」と思う方が大勢いると思います。しかし、これをABS樹脂につけると…
2Br+3H2O2→2HBr+2O2+2H2O
- このように、過酸化水素中に含まれる水素がABS樹脂に含まれる臭素と共有結合して臭化水素が発生し、黄ばみを大気中に放出するのです。だから黄ばみが無くなり、白くなるのです。
- 今回の実験によってわかったのは、紫外線照射を行うときは紫外線LEDライトを使うよりは、市販のブラックライトを使用したほうがよいということ、早く除去したい場合は直射日光にさらすのがよいということでした。
- 富山県にお住まいの方は、春から夏の間に黄ばみ除去作業を行うべきでしょう。なぜならば、北陸では春から夏の間は晴れる日が多いからです。(下の雨温図を見てもらえば一目瞭然!)
本日はここまでとします。ご清聴ありがとうございました。
参考文献および図の引用元