蜘蛛の糸の量産化成功に関して
蜘蛛の糸の量産化成功に関して
- 皆さんこんばんは。オフィス・宮島です。今日は皆さんに面白いニュースを紹介したいと思います。
鋼鉄超える強度とナイロン顔負けの伸縮性 世界初「クモの糸」量産化
2013.5.24 18:34 [企業経営]
人工的に合成されたクモの糸=24日午後、東京都港区
バイオベンチャー企業のスパイバー(山形県鶴岡市)は24日、クモの糸を人工的に合成して産業用に量産する技術を世界で初めて確立したと発表した。クモの糸は、同じ太さの鋼鉄を上回る強度とナイロンを超える伸縮性を持つといい、自動車車体などへの利用を想定している。この日、東京都内で開いた発表会見では、合成糸でできた青いドレスも公開し、革新性をアピールした。
これまで、クモの糸を合成する試みは世界中で展開されてきた。だが、コストと安全性の問題があって量産が困難だったという。
スパイバーは、微生物を使ってクモの糸と同じタンパク質を作る方法を採用。微生物の遺伝子に手を加えることにより、短時間で多くのタンパク質を合成することに成功した。これまで使われてきた高価で毒性の強い薬品を用いずに糸に加工する技術も開発した。
関山和秀社長は「クモの糸は世界で最も強靱な繊維だ。自動車や医療などさまざまな産業に応用できる」と話した。
- 「蜘蛛の糸」と聞いて皆さんはどんなイメージを持ちますか?たぶん「非常に柔らかい」と答えるのではないでしょうか。
- しかし、蜘蛛の糸は地上でもっとも強靭な材料なのです。
- 蜘蛛の糸というのは、タンパク質の連鎖でできており、蜘蛛の体内では液状で存在しています。体外に放出される際、空気と応力にによって糸状になります。この糸は同じ太さの鋼の5倍、ナイロンの2倍という「非常に強くしなやか」な性質を持ちます。理論上、直径1cm程度の蜘蛛の糸があれば、空中を飛んでいるジェット機を止めることができるのだそうです。
- 鋼と蜘蛛の糸の力学的特性についてまとめてみました。
- 鋼(軟鋼)の力学的性質
弾性係数(GPa) 伸び(%) 破壊応力(MPa) 206 20~25 392
- 蜘蛛の糸の力学的特性
弾性係数(GPa) 伸び(%) 破壊応力(MPa) 3~11 ~200 1650
- この表を見てピンと来る方は材料学を勉強していた方でしょう。しかし、このブログの対象者は中学生なので、まずわからないと思います。そこで簡単に説明いたします。
- 弾性係数
その材質の棒を引張って元の長さの倍にするために必要な力(応力)のことです。
- 伸び
その材質の棒が切れるまで引張ったとき、元の長さに比べてどれだけ長くなったかをもとの長さとの比で出したものです。
- 破壊応力
その材質の棒が切れたときの荷重(応力)のことです。
- 弾性係数
- これを踏まえて上の表を見てください。蜘蛛の糸は軟鋼材に比べ、弾性係数が1桁小さいです。これは「小さな力で引き延ばすことができる」という意味です。
- 破壊応力に注目してください。軟鋼材は392MPa(メガパスカル)なのに対し蜘蛛の糸は1650MPaです。これより蜘蛛の糸は軟鋼材の約4倍の強度を持つということがわかります。
- 最後に伸びに注目してください。軟鋼材は元の長さの2割増しの長さになった時点で破断(切れる)するのに対し、蜘蛛の糸は元の長さの3倍になるまで破断しません。
- これら3つの項目から、「蜘蛛の糸は非常に強く(破断強度が軟鋼材の約4倍)しなやか(弾性係数が3~11GPaで伸びが200%)である」といえます。
- 今までにない新素材を日本のベンチャー企業が開発したというわけです。「ものづくり大国」日本の名は伊達ではありません。このような記事に興味を持って技術者や研究者になる若い人の手助けになれば幸いだと思います。